BBC Horizon視聴記:ネコのひみつの暮らし

先日、Wired.jpがイエネコの行動追跡に関する英BBCのドキュメンタリーを報じて話題になっていました。BBCと英王立獣医大学、リンカーン大学、ブリストル大学らの研究者がイギリス・サリー州の村で、50匹ネコにGPS首輪をつけて行動を追跡。行動範囲や活動の時間帯、ネコ社会の様子などを観察したというものです。

番組はBBC2の自然科学ドキュメンタリーシリーズ Horizon で6月13日に放映された”The Secret Life of the Cat” です。残念ながらBBCのiPlayerはイギリス国内でないと視聴できないのですが、まあ人気番組ですので、タイトルでググるとだいたい観られます。非公式アップロードですのでリンクは貼りません。

番組で行われた調査によって”ホームレンジ”と呼ばれるネコの行動範囲がオスでも100m程度であること(最大で縦300m、横200mほどの大きな行動範囲を持つネコがいたそうですが)、行動範囲がほかのネコと重なる場合、行動時間帯が重ならないようにして衝突を避けているネコの社会性などが明らかになりました。ネコは、ほかのネコが行動の際に残して行ったマーキングから、いつごろライバルがそこで行動していたのか知り、同じ時間帯にそこを避けているらしいのですね。また、狩りで持ち帰ってきた獲物を集める調査も。ネズミや小鳥も捕っていますが、大きいところではモグラやウサギ。「片目だけ転がっていたの」という戦利品を持ちこんでくれた飼い主もいました。ただし、狩りはエサのためではどうもないようで、天気が悪かったり飼い主からエサをもらえば積極的に狩りはしませんし、よその家でごはんをもらっているネコもかなりいるようです。ネコドアから出入りして、フードボウルに首を突っ込んでいる映像が残っていたりして、「ナイトスナッキング」なんて呼ばれていました。

さて、GPS首輪による動物の行動追跡といえば呼ばれなくても私の出番です。どんな首輪をどのように使って研究したのか知りたいところです。こちらは安心して参照できますが、BBCニュースに掲載された今回の研究のためのGPS首輪開発サイドストーリーです。開発に当たったのは、イギリス王立獣医大学の”ストラクチャー&モーションラボ”。アラン・ウィルソン教授はこの分野では第一人者の方のようですね。

同研究所とウィルソン教授は先行して大型のネコ科の動物、チーターやライオン向けの同種の首輪型センサー”RVC Wildlife Collars”を開発しているとのこと。搭載されているのはGPS、加速度センサーとジャイロスコープ、CPUの組み合わせです。カロリズムにGPSを付けたという感じで、MEMSの進歩の賜物ですね。基本的にはネコ用も同じものですが、難題はイエネコ向けには小型軽量化を図らなくてはならないということです。小さい分、バッテリーが持たないというのですね。ただ、イエネコの場合、飼われている家に帰ってきたら充電できますので、野生動物用のように太陽電池は必要ないようです。

GPSアンテナが測位を始めるとそれなりの電力を消費し、常時測位していれば電力消費はあっという間です。そこで、加速度計がネコの動きを感知するとGPSが測位を開始するようにして電力消費を抑えたというのが今回の開発の勘所ですね。「おかげで私たちは、面白くもないネコの睡眠中のデータばかり集めるはめに陥らなくて済みました」だそうです。イエネコ用GPS首輪の動作時間は約24時間です。

合わせて、番組ではイエネコ用HDカメラも開発しています。当初GoProを使おうと考えていたということですが(夫によると最近、ディスカバリーチャンネルなどの自然科学ドキュメンタリーでGoProを見ない日はないくらいの使用率だそうですが)、73gは目標重量の2倍のということで断念。市販のペットカムは解像度が低すぎ、ということで”HD808″というキーリングに取り付けられるカメラを利用し、120度の広角レンズをつけて改造したものを番組では使用しています。こちらも加速度センサーをトリガーにして録画を開始し、バッテリー消費を抑えている点は同じです。それでも元のままではバッテリーが持たないそうで、4つのLEDを1つにするとかあっちを削り、こっちを削りしてして作ったカスタム使用。8-10時間の映像を記録できるようになっています。日中と夜間撮影ではビットレートを調整するとか、IRフィルターを取り外せるようにして昼夜使い分けるとか、細かいカスタマイズをしていますねえ。

人工衛星やエレクトロニクスを使った動物の行動調査そのものはハイテクを駆使しているのですが、機器開発の話を聞くとこういう泥臭い実装の話がたくさんでてきて、これが私には本当に面白いのです。日本で行われている、NOAA衛星とアルゴスシステムを使った渡り鳥の飛来経路調査などもそうですが、位置情報の送信機は動物の体重の何%以下とか、地味で羽根に溶け込む色合いにしないと他の猛禽に狙われてしまうとか。

ネコの場合、木の枝の間や生け垣の下、自動車の下などGPSの電波が届きにくい、マルチパスも多いところにもぐり込むことが多そうなので、そのあたりをどうやって補正して位置情報を取得しているのか気になるところです。加速度センサーやジャイロがついているというあたり補正する方法はあると思いますが、本当に位置からカスタム開発になるのでしょうね。

番組では、「ネコの福祉が最優先です」という言葉が出てきます。研究者の方にうかがったところでは、研究で動物に機器を取り付けて負担にならないようにするといった基準では世界一厳しいのがイギリスだそう。基準を満たしていないと論文を審査すらしてもらえないとのことです。ネコ用GPS首輪の場合、引っかかったらすぐに取れて落ちる仕様だということが繰り返し強調されています。

ところで、6月13日付の日経新聞記事チーター、1歩で速度変え方向転換 加速パワーはボルトの4倍に「英王立獣医大などのチームが…」「アフリカ南部ボツワナに生息する野生のチーター5頭に、GPSや加速度計を組み込んだ首輪を付け…」なんて文言が出てきます。あら同じ研究者かしらと思ったらまさしく。BBCのイエネコ番組では、公民館でGPS首輪装着ボランティアを募る際に、アラン・ウィルソン教授が「これはチーター用」と大きなサイズの首輪を見せています。ボツワナのチーターに取り付けられたものですね。掲載誌はネイチャー。ネイチャーニュースに紹介記事がありますが、こちらも面白いのです。

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