ファルコン・ロケットを再利用するとスペースXはどのくらい「お得」?

ファルコン・ロケットを再利用するとスペースXはどのくらい「お得」?

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アメリカで超小型衛星向けの小型ロケットを開発するVector Space Systemsのジム・カントレルCEOが、SpaceXのFalcon9ロケット第1段の再利用について、経済性の観点からQuoraに回答を寄せていました。面白いのでざっと訳してみます(やや生硬な部分はご容赦ください)

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How much does SpaceX save by reusing a Falcon rocket?

再利用可能なロケットを開発するための研究開発費を賄う、としよう。ロケット第1段を帰還させるには、機会費用(ここでは、帰還時に必要な燃料と、もっと多くのペイロードを軌道に乗せることができたはず、という収益機会の喪失という意味)と、フライトとフライトの間に必要な改修費用がかかる。一般的に業界の経験からすると、すべての費用を考慮して収益が得られるとするまでに、再使用ロケットまたはブースターを5~10回は打ち上げなければならないとされている。

このテーマについては多くの論文が書かれており、これはかなり確かな「経験則」だといえる。だが、これは「中古」の第1段で飛んでいる多くの顧客が要求するであろう値下げを考えると割に合わない。

私はSpaceXのFalcon 9の第1段は3回くらいまでしか打ち上げに再利用されないと考えている。したがって、SpaceXはこの算盤勘定で考えると再使用ロケットで収支が合うとはとてもいえないのだ。

それなら、なぜSpaceXは再利用ロケットを着陸させようとしているのだろう? これには2つ理由が考えられる。

まず、これは明らかに火星への着陸技術だということだ。これがSpaceXの目標の1つだとすると、(私はそもそもSpaceXという企業を興した主たる目的が火星行きだと思っている)、着陸システムの開発コストは再利用性とは関係のない他のさまざまな費用として計上されることになる。

次に、再利用性はフライト料金の大幅な増大を可能にする。おそらく主目的はこちらだろう。SpaceXの財務モデルを解析してみると、良好で強いプラスのキャッシュフローに達するためには、このクラスのロケットがこれまで実証してきた年間10~12回よりも多くの打ち上げが必要になることがわかる。単なる生産と物流の観点からすれば、再利用性によって打ち上げ可能回数を簡単に倍増させる。

再利用性を実現することで、年間20~25回打ち上げを実行でき、スペースXはより確実なキャッシュフローポジションに入ることができる。これが非常に重要な再利用ロケット開発の推進力であると私は考えている。主として生産、輸送、および付随するインフラストラクチャの面からすると、第1段は打ち上げ回数を増加させる際にはボトルネックの1つになると考えられている。 再利用性によって素晴らしいブランドイメージを形成できるということもある。だがもっと重要なのは、再利用技術で火星着陸の準備をしつつも、スペースXが打ち上げ回数を倍にしてより多くの金を稼ぐことができる、ということだ。

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第1段は生産のボトルネックだから2~3回再利用できればそろばんが合うというわけですね。となると、再利用した機体で打ち上げ失敗があると一気にキャッシュフロー健全化が遠のきそうな気はします。オペレーション、どうなっているんだろうと思いますね。

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トランプ政権下のNASA方針決定チームにニュー・ホライズンズのアラン・スターン博士が参加へ?

Credit: NASA/JHUAPL/SwRI

Credit: NASA/JHUAPL/SwRI

2017年1月20日のドナルド・トランプ氏、米大統領就任まであと1ヶ月を切りました。

新政権でアメリカの宇宙政策とNASAがどうなるのかはまだはっきりとはわかりません。米メディアも情報が少ないので手を焼いているような印象を受けます。

新政権の周囲にいる人と議会の共和党は、これまでのNASAの計画の中でも小惑星再配置ミッション(ARM:Asteroid Redirect Mission)と地球科学プログラム(最近では、ハリケーン観測衛星CYGNSSを打ち上げました)に冷たいので、この2つは今後は冷遇、場合によっては撤退もありうるかもしれません。特に前者については、「NASAもやめてしまった小惑星探査」のような余計な言説になって日本に入り込んでくるのではないか? という不安も感じています。

何がどうなるのかはともかく、現状ではどのような方向性で話し合われているのか、整理しておきましょう。

■大統領選挙中に発言していた人たち

ボブ・ウォーカー氏
元下院議員のウォーカー氏は、2016年の大統領選挙中にトランプ氏の陣営で宇宙政策アドバイザーを務めた人です。NASAの地球科学を強く批判しており、同分野はNOAAに移管してNASAは宇宙探査に専念すべき、との主張が知られています。

現在、ウォーカー氏は新政権のNASAランディングチーム(方針策定チーム)には入っておらず、公式には宇宙政策を主導する立場にはありません。ただ、12月頭に開催された、宇宙政策に関するギャロウェイ宇宙法シンポジウムで講演、「NASAのゴールを“火星”といった単一の目標ではなく、太陽系探査全体とすべき」「地球科学部門を他の政府機関に移管」「ISSの運営を半官半民の企業体に移管」「National Space Councilの復活」「安全保障衛星の拡大とロボット化の推進」といった主張を述べたといいます。
ウォーカー氏は、「NASA長官就任を目指しているわけではない」と強調したということですが、公式な立場を離れても、発言内容はまだ重要視されているのではないかとも考えられます。

ジム・ブライデンスティーン氏
現役の下院議員であるブライデンスティーン氏は、新政権でのNASA長官候補として名前が上がったこともある人です。複数の候補の名前が上がっていますが、NASA長官は新大統領就任と足並みを合わせなければならないというものではないので(現在のボールデン長官は、前任者の任期終了後に就任しているので、オバマ大統領就任とは1年以上タイミングがずれています)結論が出るのはもう少し先かもしれません。
現在、ブライデンスティーン議員は下院の科学・宇宙・技術委員会で環境小委員会の議長を務めているということで、宇宙資源採掘と宇宙条約の整合性に関する議論を行っているとのことです。これはこれで非常に気になるテーマですが、長くなりすぎるのでちょっと置いておきます。

■現在のNASAランディングチーム

11月末、大統領政権移行チームは、新NASAの方針を策定するランディングチームを組織し、12月頭には初期6人のメンバーが参加しました。

クリス・シャンク氏:最初に選ばれたメンバー。ブッシュ政権下で当時のNASAのマイク・グリフィン長官の特別補佐官を務める。現在は下院の科学・宇宙・技術委員会(SS&T)のスタッフ。

グレッグ・オートリー氏:南カリフォルニア大学教授

ジャック・バーンズ氏:コロラド大学、天体物理学科教授。アメリカ天文学会副総裁、ルナール大学天文物理学研究ネットワーク(LUNAR)責任者、NASA諮問委員会科学委員会委員長などを経験。

スティーブ・クック氏:NASA出身。この人は、ブッシュ政権下で月・火星探査を計画してたコンステレーション計画の元、Ares計画のマネージャーとしてアレスIロケットとアレスVロケット開発に関わっていたということで注目されています。

ロドニー・ライスヴェルド氏:NASA出身で、マイク・グリフィン前長官とチャールズ・ボールデン現長官の元で上級政策顧問をつとめました。

サンドラ・マグナス氏:マクダネル・ダグラスのエンジニアから宇宙飛行士へ。スペースシャトル引退まで4回のミッションを経験し、ISS Expedition18長期滞在にも参加。現在はAIAAのエグゼクティブ・ディレクターとのことです。女性の宇宙飛行士経験者は、米女性初のスペースシャトルコマンダーとなったアイリーン・コリンズ氏がNASA長官候補として名前が上がっているので、あるいはこの方もそうかもしれません。

ジェフ・ワックスマン氏:元IBMワトソン研、現在はアリゾナ州選出のSchweickert議員の元で政策研究を行っているそうです。

■ランディングチームの追加メンバー

12月20日には、このランディングチームにさらにメンバーが加わりました。

チャールズ・ミラー氏:元NASA。2009年から2012年まで、NASAの民間宇宙企業との協業計画に参加し、CCDeVなど複数の計画に携わっていたといいます。また、ISSで超小型衛星放出機構など複数の宇宙実験機器を開発している、NanoRacksの設立メンバーでもあるといいます。NextGen Spaceというコンサルティング会社も起こしているとのこと。2015年には、NASAによる民間宇宙の可能性を評価するレポートの主任研究員を勤めており、「官民パートナーシップなど民間の力を活用すれば、5~7年で月への短期間ミッションを、これまでよりもはるかに低いコストで実現できる」と結論を出したといいます。1990年代から、民間宇宙開発推進のロビー活動も行っていたといい、かなりのコマーシャルスペース推進派です。

アラン・スターン博士(候補):追加のランディングチームメンバーとして、冥王星の探査で話題となったニュー・ホライズンズの主任研究員、アラン・スターン博士の名前が上がっているそう。実は、スターン博士は民間宇宙活動を推進するCommercial Spaceflight Federationのチェアマンをつとめていて、複数の民間宇宙企業に関わっています。高高度気球での宇宙旅行を計画するWorld Viewのチーフサイエンティストであり、ブルー・オリジンやヴァージン・ギャラクティックのコンサルティングにも参加、商業月旅行を計画しているGolden Spikeのアドバイザーも務めています(このゴールデン・スパイクは2012年の計画発表以来あまり音沙汰がないそうですが)などなど。

Alan Lindenmoyer氏(候補):ジョンソン宇宙センターでコマーシャルクルー、コマーシャルカーゴのNASA側責任者をつとめた人です。

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NASAのランディングチームメンバーと候補者を見ると、元NASAメンバーも多くいます。かつ、民間宇宙開発に理解もあり、これまでのNASAと宇宙企業の協調路線を継承する方針なのかな、とも思わせます。SLS開発は継続し、ボーイング・ロッキードマーチン合同のULAによるヴァルカンロケットも政府系衛星打ち上げの基幹ロケットとして採用、といった。

その一方で、元NASA関係者から、『スペースXのレッド・ドラゴンをNASAの火星計画に組み込もう』といったもう一段の民間宇宙開発推しの発言があり、これをジェフ・ベゾス氏が出資しているビジネス系メディアが報じる(しかもARM計画の廃棄とセットで)など、何かあまり好きになれない流れもあったりします。しかも、よく考えたらジェフ・ベゾス氏のブルー・オリジンはヴァルカンロケットにBE-4エンジンを供給することになっているので、ベゾス氏からするとどっちに転んでも悪くない話なんですよね…

どこまでもややこしいNASAの将来ですが、引き続き経過を追って、最終的な着地点まで見届けたいと思います。

ドナルド・トランプ大統領と火星への道のり

2016年11月9日、アメリカ大統領選挙に共和党のドナルド・トランプ氏が当選し、第45代米大統領となることが決定しました。米大統領戦に勝利するには政党が結束していることが必要だと思っていたので、共和党大物議員が次々と不支持を表明したトランプ候補が当選したことにはとても驚いていますが、選挙結果は選挙結果です。

決まったからには、トランプ新大統領がどのような宇宙政策を主導するのか、その方向性について考えてみたいと思います。

困ったことに、候補者であったときからトランプ氏は宇宙政策についてほとんど具体的な案を示していません。Scientific AmericanSpaceNewsなどいくつかのメディアが大統領選の最中に質問していますが、トランプ氏は抽象的かつ短い回答をしているにとどまっています。例えば有人宇宙政策はどうするのか、NASA予算は拡大なのか縮小なのか、といったことには「現状の問題については答えられない」としています。2020年代に小惑星へ、2030年代に火星へ、という現在の目標に対する回答は「就任後は、宇宙計画について包括的なレビューを行い、議会と共に宇宙ミッションとその優先度を決定する」と答えているのみ。クリントン、トランプ両氏の宇宙政策に関するメディア記事をまとめたForbesの記事によれば、要するにトランプ氏のこうした態度は「宇宙への関心の欠如を示しているのではないか」としています。

とはいえ、大統領に就任するからには、宇宙政策を放置、NASAは勝手にやって、というわけにもいきません。また、「アメリカを再び偉大にする」と打ち出しているからには、世界の宇宙開発を主導していると考えるアメリカの立場を積極的に放棄するということも考えにくいです。「ビジネスマンとして」とコメントしていることからも、産業と科学技術の分野で後退すると受け取られる施策も取りにくいでしょう。ただ、コストとベネフィットを勘案して、最大の効果が上がるようにするとはいっています。

情報や手がかりがない中で予測するのはあまり良いことではないかもしれませんが、あえてこの「関心は特にないが、後退しているようには見られたくない」ということを実現しようとした場合、どんなことをするのか考えてみたいと思います。

そこで考えられるのが、4年の任期終了後に設定されているような大目標には手はつけないが、その道程に計画されていることには手をいれる、という方法。アメリカがいま抱えたり検討している大きな宇宙プログラムには、2030年代の有人火星探査、2020年代の有人小惑星探査、木星の衛星エウロパの無人探査、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)、国際宇宙ステーション(ISS)の2024年までの維持と民間宇宙輸送の推進、などがあります。

この中で、火星有人探査が最大規模の目標であることは間違いないと思いますが、ここには手を付けないのではないかと思うのです。「火星にアメリカ人が一番乗り」はとてもわかりやすい目標ですし、火星をやめてどうするのか、という問題もあります。ここで月をもう一度有人探査の目標にしてしまうと、ルナ計画を再開して月面基地計画を進めるというロシアや中国との競争になってしまうのです。

エウロパの無人探査については、目標にはあえて手を付ける必要もないし、議会と協調して予算を理由に実現を先延ばししてもどちらでもよいというところではないでしょうか。ISECGの国際宇宙探査ロードマップ(もうすぐVer.3が発表されるとのことですがそれにしても)を見ても、木星をターゲットにした大目標をもっている国はアメリカ以外になく、ジュノー(木星)、ニュー・ホライズンズ(冥王星とカイパーベルト天体)の実績を持つアメリカ以外の国が、トランプ大統領の任期中に彗星のように抜き去っていく、ということはちょっと考えにくいからです。

ISSについては、すでに民間へ宇宙輸送を委託するCOTSが始動していることから、産業育成の点からいっても民間移譲の流れでこのまま進めていくと思われます。また、JWSTは完成まで押し詰まっており、予定通りならば任期真ん中の2018年打ち上げです。任期中にハッブル宇宙望遠鏡の後継機として世界最高性能の宇宙望遠鏡打ち上げに立ち会う大統領、という立場を捨てる理由もないでしょう。

と、いうわけで米大統領としてトランプ氏は現在の宇宙政策を拡大路線で進めて行くようにも思われますが、ここで考えたいのが、2030年火星有人探査という目標を実現する、その方法です。つまり、Space Launch System(SLS)とOrion宇宙船の開発です。

SLSは実現すればアポロ宇宙船を打ち上げたサターンVを超える世界最大級のロケットになる予定ですが、予算超過と計画の延期が何度か問題になっています(JWSTもたびたび延期しましたが、こちらは完成間近)。無人モジュールEM-1を搭載した試験機初打ち上げは2018年末に予定されていますが、上段を改良しての実用機の打ち上げは早くとも2021年以降。アメリカで人気の天文学者フィリ・プレイトさんもこの問題を取り上げたことがあり、「一宇宙ファンとしてはSLSはエキサイティングだけれども」としながらもその実現に疑問を呈しています。

ここで、もしもトランプ大統領と議会がSLS計画の見直しを打ち出し、火星有人探査の目標はそのままに、手段をSLS以外のもっと費用対効果の高いものにする、といえば、かならずしも「宇宙(科学)オンチの大統領の暴挙」というよりも、英断と評価される可能性もあると思うのです。

しかも、SLSを推進するNASAの中にも、SLS反対派がいます。現在はNASAを離れていますが、元NASA副長官のロリ・ガーヴァーさんはSLS中止を主張する論者で、元宇宙飛行士であり有人宇宙探査協力推進派のチャールズ・ボールデン現長官とは異なる立場をとっています。

NASA長官は米大統領が任命するので、ここでボールデン長官の後にガーヴァーさんをNASAへ呼び戻すとしたらどうでしょう? もともとガーヴァーさんもオバマ大統領が任命した人ではあるので、応じるかどうかはわかりません。ただ、NASAを率いるだけの実績を持つ人の中にも、SLS中止の側に立つ人はいるわけです。また、アメリカ政府機関の中でも世界的に知名度、人気の高いNASA長官に女性を登用すれば、女性に人気がないともいわれるトランプ氏にとってはひとつの評価点になるかもしれません。

では、SLSをやめて火星はやめないとすれば、どうやって火星へ行くんだという疑問は当然でてきます。ここから先は憶測の上に憶測を重ねるようなことになりますが、COTSで有人輸送技術を手にした後に、火星有人探査を目標としている民間企業がありますね、とは思います。

もう一つ懸念があるとすれば、SLS/Orionでの火星探査の前に、その前段階として予定されている小惑星探査(Asteroid Redirect Mission)ですが、これは大きな後退を余儀なくされるということです。せっかく日本の「はやぶさ2」と同時期に小惑星探査機OSIRS-RExを打ち上げているアメリカがそうなってしまったら残念なのですが、先行きに対するヒントは、まだ見つかりません。

プラネット・ラボの超小型衛星があればLANDSATはいらない?

3月16日付のNew York Timesに、超小型衛星コンステレーション構築を開始したリモセンベンチャー企業、Planet Labs社の紹介記事が掲載されています。同社の4kg程度の超小型衛星「Doves(はと)」シリーズ衛星のビジネス紹介であると共に、アメリカの宇宙ベンチャー企業ビジネスの良い紹介記事になっていますので、興味深く読みました。
Start-Ups Aim to Conquer Space Market

Planet Labs社サイトより。ISS「きぼう」エアロックからのDoves衛星放出

記事中で紹介されているDove衛星は、国際宇宙ステーションから次々と放出が行われている超小型衛星放出機構によって軌道上に展開されています。Japanese astronautsは、ISS日本実験棟「きぼう」から超小型衛星の放出を担当されている、若田光一宇宙飛行士のことですね。放出に当たって不具合も報告されているのですが、Planet Labs社は同型衛星によって全131機ものコンステレーションを構築するそうです。多少の不具合は織り込み済みなのかもしれません。また、民生品の機器(ノートPC用のバッテリーなど)を衛星開発に採用していると書いてあります。軌道実証は行われていない、フライトプルーブン「ではない」コンポーネントを採用して開発費を抑え、軌道実証と衛星コンステレーションのシステム構築を同時進行で進めているようですね。衛星は、ITベンチャーの製品と同様にバージョンアップを繰り返しており、現在開発中のグループは、すでに軌道上にある旧世代の衛星から数えるとVer.9にあたるそうです。

こうした新興の宇宙企業はthe space start-up、宇宙スタートアップと呼ばれ、シリコンバレーのITベンチャーと同じ開発手法だと紹介されています。そして、Silicon Valley is taking its disruptive ways into outer space. (シリコンバレーが宇宙に雪崩を打ってきている)とも。同様の企業として、すでにISSへの補給船商業打ち上げを2度成功させた(3回目は延期になってしまっていますが)、宇宙新興企業の筆頭Space X、昨年11月の衛星初打ち上げ以来、高解像度リモセン画像や動画を次々と公表しているSkybox Imaging、モハーヴェ宇宙港で再使用ロケット開発を行っているMasten Space Systemsなどが紹介されています。

ビジネス手法として、シリコンバレーベンチャーと同様の宇宙開発は支持を得ているようです。少なくとも、Planet Labs社は、同社の未公開株6500万ドル相当以上の投資を獲得しているとのことです。

それでは、宇宙開発もこれからは民間の時代だ、日本だって軽薄短小の技術を持っているので、これからは超小型衛星開発に乗り出せばいいのだ、となるかというと、それは少し違うのではないかと思っています。

記事では、低コストで開発でき、高頻度で地球観測が可能なDove衛星の比較対象として、NASAが打ち上げ、USGS(アメリカ地質調査所)が運営するLANDSAT8号(LDCM)が挙げられています。Dove衛星の500倍もの重量があり、開発費は10億ドルもかかっている。LANDSAT8号は地球上のある地点を撮影し、次に同じ地点の上空に来るまで2週間以上(回帰日数は16日)もかかるのに、Dove衛星なら(コンステレーションが完成すれば)毎日でも同じ場所を撮影できる。Dove衛星搭載のコンピュータが6か月前の最新モデルであるのに対し、大型衛星のコンピュータは10年前の性能……なんだか、国費衛星はムダのかたまりみたいですね。

そのムダに見える機能こそが、まだまだ求められているのだというコメントが紹介されています。気象や農業の専門家によれば、LANDSATのような大型衛星が搭載している赤外線イメージャのデータが専門分野では必要とされており、超小型衛星は同様の機能を持っていません。比較の対象にならないので、「真の競争はまだ始まっていない」ということです。

さらによく読むとDove衛星はかなりいろいろなものを切り捨てているからこそ、コストを削減できることがわかります。軌道実証を経ていない衛星部品を採用していることもそうですし、衛星には推進システムを搭載していないそうです。衛星に推進システムがないということは、スペースデブリの接近が懸念されても、軌道を調整して避けることができません。
※念のため、Dove衛星の軌道はISSと同じ高度400km付近です。数多くの地球観測衛星で込み合っている高度600~800kmの領域ではありませんし、衛星の運用終了後の地球大気圏への再突入も早くなります。ただ、ISSへのデブリ衝突が懸念されているわけですから、問題はやはりあるといえます。

衛星が、スペースデブリのような潜在的なリスクに備える機能を持っていないのだとすれば、結局は誰かがそれを引き受けることになります。それは、アメリカが備えているデブリ探知、接近警告システム(NORADのレーダー群からJSPOCの警報発令体制まで)もそうですし、agiなど複数の企業の協力による、民間のSSAも始まっていると聞きました。

ISSからの衛星放出にしても、そもそもISSという軌道上施設にアメリカは大きな投資をしているわけですし、Dove衛星を運んだのはNASAとの契約のもとに商業輸送を担うオービタル・サイエンシズのシグナス補給船です。放出機構には「きぼう」のエアロックを使っていますが、NanoRacksの衛星放出機構はNASAの認証のもとに開発がすすめられたアメリカ発のシステムです。

宇宙スタートアップが開発した靴箱サイズ、9ポンドのDove衛星が軌道に乗って機能を果たすまでに、アメリカは40年にわたってLANDSAT衛星を維持して民生用リモセン衛星という市場を開拓し、ISSを構築し、スペースシャトルから商業ISS補給船事業への引き継ぎを行い、スペースデブリ監視網というかSSAの体勢を整えている。他にももっといろいろな投資をしているとおもうのですが書ききれません。

いうなれば、Planet Labsの事業はアメリカがこれまで頑張って整えてきた、宇宙の実用化という環境、宇宙特区の上に乗った事業なのだと思います。Dove衛星がコスト削減の追及のために切り捨てた何かが、後に何らかの事故の原因になるようなことがもしあれば、最終的にそのつけは国が引き受けます。ですから、それだけのバックアップ体制はできているということでしょう。

なんだか老婆心くさい文章になってしまいました。ただ、最近はアメリカの事例をもとに、同様の条件が整っているかどうかをすっ飛ばして日本も宇宙の民営化を進めるべき、といった論調があるような気がして、思うところを形にしておいた次第です。
(論拠になる資料のリンクはおいおい進めます……)

ISSを2024年まで運用延長:発表全文

2013年9月17日、来日し東京大学で講演したNASA チャールズ・ボールデン長官 (撮影:小林伸)

2013年9月17日、来日し東京大学で講演したNASA チャールズ・ボールデン長官 (撮影:小林伸)

2014年1月9日・10日の2日間にワシントンで開催されたIAA Space Exploration Conferenceにあたり、前日の1月8日にオバマ政権が国際宇宙ステーションの2024年までの運用延長を打ち出しました。
アメリカ議会はこれを了承するのか? ISSに2024年まで費用をかけると、SLS/Orionを継続できなくなるという予測もあるがどうするのか? 日本を含めてどこまで参加各国がついていくのか? 技術的には、ISSは2028年まで運用できるということだがそれはどんな保証によるものか? さまざまな疑問がありますが、まずはなんといってもアメリカ(オバマ政権とNASAボールデン長官)がなんといっているのか、文言を読んでみないことには始まりません。
報道ですとどうしても省略されてしまいますから、例によって自力で読みこんでみることにしました。自分のためのものですから荒っぽいものではありますが、要素となる語句は落としていないつもりです。
しかし、清々しいほどアメリカの国益のことしか書いてありませんね(当たり前ですが)。それはまあ当然ですので、ここから何を引き出せるのか、まずは考える材料となればと思います。

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オバマ政権、国際宇宙ステーションを少なくとも2024年まで延長

1月9日から10日まで、ワシントンに世界30カ国以上の宇宙機関の長が集まり、将来の宇宙探査に関する史上初のサミットを開催するにあたり、オバマ政権が国際宇宙ステーション(ISS)を少なくとも2024年まで延長すると承認したことを喜びとともにお伝えします。我々は、ISSのパートナーが少なくとも次の10年までの延長の取り組みに参加し、この他に類を見ない軌道上実験室において、画期的な実験の実施を継続するであろうと希望、楽観視しております。

ISS運用の延長により、NASAと国際宇宙コミュニティは数多くの重要な目標を達成できるでしょう。

第一に、NASAはISSで、地球低軌道の先にある計画中の、2025年までに小惑星へ、2030年までに火星へといった長期間の有人ミッションに必要な研究活動を完了します。NASAは、長期のミッションで予見される32の人体への健康リスクのうち、21項目を十分に低減するにはISS上の研究が必要と考えています。それと関連するISSの重要な機能とは、人間が深宇宙で安全かつ生産的に活動するために必要な宇宙機システムと技術の試験を行うことです。2024年までのISS延長により、こうしたシステムを成熟させるために必要な時間を得られるでしょう。

第二に、ISS延長は宇宙ステーションから社会的利益へ至るより流れをさらに広げます。ISSで実施された研究は、すでに医学や産業へ影響する重要な数多くの発見をもたらす結果となりました。医学の例では、サルモネラ菌や細菌の抗生物質耐性株に対する潜在的なワクチンや、健康な細胞には影響を及ぼさずにがんの腫瘍へ薬剤を届ける治療のためのマイクロカプセル化技術などがあります。さらに、ISSの先端技術は、これまで手術不可能だと考えられていた腫瘍を取り除くロボット手術の開発にも道を開いています。

ISS延長の将来的な利益とは、NASAと民間宇宙開発パートナーに対し、貨物と人員を地球低軌道へ輸送する商業宇宙産業へのさらに十分な移転の時間をもたらし、NASAは深宇宙探査のための次世代ヘビーリフトロケットと有人カプセルの開発に集中できるようになるということです。

すでにふたつのアメリカ企業がISSへの補給契約を結んでいます。現在の貨物輸送契約は、2016年、2017年の期限に終了しますが、ISSを2024年まで延長すれば、さらに多くのフライトをISS貨物輸送サービス契約に追加することができるようになり、より競争力のある価格設定となり、新しい民間の入札者も参加可能になって最終的にはもっと多くの合衆国の商業衛星打ち上げへ繋がるでしょう。

合衆国国土から宇宙ステーションへアメリカの宇宙飛行士を打ち上げることは、オバマ政権にとって最優先項目であり、民間企業が私たちの宇宙飛行士を軌道上へ運ぶ認可へと大きな一歩を踏み出しています。初の商業有人飛行は2017年に予定されており、一部はわずか3年間の商業有人飛行への投資を疑問視しています。2024年までISSを延長すれば、付帯するフライト回数も増加し、フライト1回当たりのコストを引き下げ、投資はもっと魅力的になるでしょう。

ISSはまた、地球とその気候の変動に関する研究において、ますます重要な役割を果たしています。今後の数年間に、ISSはSAGE III( Stratospheric Aerosols and Gases Experiment:成層圏エアロゾルとガス実験)やRapidSCAT(ocean winds measurement instrument:海洋風測定器)、OCO-3(Orbital Carbon Observatory:軌道上炭素観測衛星)、CREAM(Cosmic Ray Energetics and Mass experiment:宇宙船エネルギー論と質量実験)、CALET(Calorimetric Electron Telescope:カロリメータ型宇宙電子望遠鏡)といった地球と宇宙科学を研究する機器を迎えます。2024年までISSの安定性と可用性を確実にすることで、科学コミュニティにISSというプラットフォームは長期間の研究の努力にとって重要なものになり得るという信頼を与えるでしょう。

最後に、ISSの延長は今後の有人宇宙飛行における合衆国のリーダーシップを凝集していくことでしょう。ISSは、史上もっとも複雑かつ挑戦的な工学的努力の結集です。その成功のカギとは、NASAの創意工夫と国際協力のコンビネーションンにあります。15カ国のパートナーと現在68カ国の1回またはそれ以上のISS利用国による、この他に類を見ない軌道上実験室は、平和的な国際協力によって達成することができた、明らかな人類にとっての利益の実証です。アメリカがそのリーダーとして、このままこのパートナーシップを維持することは重要です。宇宙でのリーダーシップは、経済的発展、技術的優位、国民的プライド、より広範な世界におけるアメリカのリーダーシップへの貢献をもたらすのです。

ISSは、巨大な科学的、社会的利益を提供する他に例のない施設です。少なくとも2024年まで運用を延長するというオバマ政権の決断は、その潜在的な可能性を最大化し、国家と世界にとって欠かせない利益をもたらし、宇宙におけるアメリカのリーダーシップを保持することができるでしょう。

ジョン P. ホールデン
科学技術担当大統領補佐官
科学技術政策局局長

チャールズ・ボールデン
NASA長官

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追記:タイトルが「2014年」になっていました。ご指摘いただいて2024年に修正いたしました。お恥ずかしい。

XCOR ピストンポンプ採用ロケットエンジン開発中

The XCOR Hydrogen piston pump

先日、XCOR Aerospaceのプレスリリースを元に、新型エンジン向けピストンポンプの開発についてニュース記事を書きました。

エックスコア 新型液体水素エンジン開発の目標達成を発表(Responce.jp)

「XCORはターボポンプではなく、ピストンポンプでロケット上段エンジンを開発しようとしているのか!」との反響をかなりいただきました。しかも、EELV(発展型使い捨てロケット)の上段エンジンとして、現行のロケットダイン開発、RL 10の後継としようというのです。そもそも、私もXCOREといえばLynx、商用弾道飛行というイメージしかなかったので、ULAといっしょに政府衛星用ロケット向けのエンジン開発をしていたとは驚きです。

記事中で、”XCOR水素ピストンポンプ” がEELVの上段エンジンに採用されてRL 10の置き換えになると思いっきり言ってしまっています。XCOR公式ではっきりそう言っているわけではないのですが(少なくとも私は見つけられていない)、複数の報道を総合したものです。spacenes.com記事でもULAのコメントとしてRL 10の名前を挙げつつ、上段エンジン供給に触れています。こちらの記事にはXCORのサイトからリンクがありますので、記事内容を是としたものと考えました。

上記記事によると、XCORのピストンポンプエンジンが実用化され、搭載したロケットが打ち上げられるのはかなり先のことです。ULAでアトラス、デルタのプログラムを担当するジム・スポニック副社長のコメントでは”the next decade”だということですので、早くても2020年以降ですね。

EELVと後継上段エンジン開発については、こちらの宇宙政策委員会 宇宙輸送システム部会第2回JAXA提出資料 その9 を参考にしています。

低コスト上段エンジンを開発するにしても、なぜピストンポンプなのか。ここはもっと知りたいところですよね。記事にはあまり細かいことは書けませんでしたので、参考にしたXCORのブログ記事のドラフト訳を置いておきます。ここ誤訳だぞ、等のご指摘があればぜひ。

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XCOR Piston Pumps – the Holy Grail

冒頭あいさつ省略

XCORのロケットピストンポンプは、従来のロケットエンジンに対して推進機関の全体的なデザイン簡素化する。低圧の液体酸素と同様のケロシンを使用することで輸送機全体の重量を低減し、ロケットエンジンの運用を「ガスを入れたら打ち上げ」を可能にすることで、輸送機の迅速な対応をも可能にする。

通常、高性能ロケットエンジンでは複雑な設計の特徴、過酷な内部動作条件(ゆえに、特殊な材料を必要とする)、を持ったターボポンプを採用しており、最初に設計された推力の範囲に縛られ、一般的にきわめて熟練かつ高給の技術者がポンプ製品を製造し、維持するために必要とされていた。現在の高性能ロケットターボポンプの動作時間はおよそ30分(これより短いことも、長いこともある)で、それが使用できなくなる前に交換する必要がある。使い捨てロケット上段用の優良なターボポンプは、1台あたり50万ドルから数百万ドルのコストがかかる。

それにくらべて、XCORのピストンポンプは特殊な製造プロセスや材料を必要とせず、精密機械工場で容易に製造可能だ。このポンプは、一般的な工場で専門学校の卒業生やFAAが認可するAirframe & Power Plant (A&P) 航空整備士のジュニアライセンス取得者であれば、数時間で取り扱えるようになる。XCORのロケットピストンポンプは、ローリングテスト機に取り付けてチェックアウトを完了したその日のうちにリンクスに搭載することが可能だ。購入から組み立てまで全て含めた価格は、同等の性能を持つターボポンプより一桁安い。

ロケットピストンポンプは、定期的に予防的メンテナンスとして内部の損耗、裂け目のチェックとシール部の交換を受け、ポンプ性能を確保して打ち上げに臨むことになる。XCORは、ロケットピストンポンプをリンクスで、定期的な予防的メンテナンスを施しつつ何千ではないまでも何百時間と使用すること考えている。かつ、1回3分間のフライトでロケットの打ち上げ回数をもっと増やそうというのだ。

各ピストンポンプは、各々異なる速度で異なる量の推進剤を、かなり広い範囲の推力レベルに対応する各種のエンジンに供給できる。また、同時に複数のエンジンに推進剤を供給することも可能だ。

一例として、XCORはあるエンジンの推力を30%向上させようと考えている。ターボポンプの世界では、1~2年の時間をかけ、100万ドル以上の単発的な開発を行って、全く新しい設計のターボポンプをもたらしていただろう。我々のピストンポンプの場合は、大幅な余力を持っているので、ポンプのスピードアップさせるだけで希望する推力レベルを達成できる。

リンクスでは、各ポンプは非常に強力で、大きな余裕を持って推進剤を2機(または4機)のメインエンジンに供給できる。つまり、1台のポンプが非常に強力で液体酸素を2機のエンジンに供給できるのだ。2台目のポンプは燃料(ケロシン)を同じ2機のエンジンに供給する。これがリンクス推進システムのベースラインとなる4ポンプ4エンジンだ。各エンジンは、推力およそ3000重量ポンド(※)となる。

※13.34キロニュートン

ロケットピストンポンプの利点がすべて上回っていることを考えると、なぜこれまでロケット推進システムでターボポンプが使われてきたのか、という疑問が生じるかもしれない。推力6万から10万重量ポンド(※)より小さい推力レベルでは(ていねいにいえば液体水素またはケロシンといった燃料のために)、われわれも同様の疑問を持った。しかし、上記の推力レベル以上では、ターボポンプの単位重量あたりのパフォーマンスはピストンポンプを上回るものなのだ。

※266.89~444.82キロニュートン

今後の本ブログでは、推進システムとピストンポンプ、それから熱力学的サイクルがすべてを支配する、もっと高いレベルについて論じようと考えている。

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とのことです。続報をまたないと、ピストンポンプが得意とする領域についての詳報は分からなさそうです。ゆっくり追いかけていきましょう。しかし聖杯探究とはまた大きく出ていますね。

画像素材:準天頂衛星「みちびき」LEX信号無人走行デモンストレーション

準天頂衛星 測位補完信号を用いたトラクター無人走行デモンストレーション@東京海洋大学

取材写真・画像の共有を行います。Google+上のWebアルバム全103点です。

  • 取材対象:ICG(第6回衛星航法システムに関する国際委員会)デモンストレーション
  • 取材日時:2011年9月6日
  • 取材場所:東京海洋大学
  • 含まれる画像:準天頂衛星LEX信号受信システム、同トラクター無人走行デモ(動画)、屋内測位IMESシステムデモ、東京浅草・浅草寺でのIMES観光案内アプリケーションデモ など
  • 撮影者:小林伸

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