ファルコン・ロケットを再利用するとスペースXはどのくらい「お得」?

ファルコン・ロケットを再利用するとスペースXはどのくらい「お得」?

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アメリカで超小型衛星向けの小型ロケットを開発するVector Space Systemsのジム・カントレルCEOが、SpaceXのFalcon9ロケット第1段の再利用について、経済性の観点からQuoraに回答を寄せていました。面白いのでざっと訳してみます(やや生硬な部分はご容赦ください)

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How much does SpaceX save by reusing a Falcon rocket?

再利用可能なロケットを開発するための研究開発費を賄う、としよう。ロケット第1段を帰還させるには、機会費用(ここでは、帰還時に必要な燃料と、もっと多くのペイロードを軌道に乗せることができたはず、という収益機会の喪失という意味)と、フライトとフライトの間に必要な改修費用がかかる。一般的に業界の経験からすると、すべての費用を考慮して収益が得られるとするまでに、再使用ロケットまたはブースターを5~10回は打ち上げなければならないとされている。

このテーマについては多くの論文が書かれており、これはかなり確かな「経験則」だといえる。だが、これは「中古」の第1段で飛んでいる多くの顧客が要求するであろう値下げを考えると割に合わない。

私はSpaceXのFalcon 9の第1段は3回くらいまでしか打ち上げに再利用されないと考えている。したがって、SpaceXはこの算盤勘定で考えると再使用ロケットで収支が合うとはとてもいえないのだ。

それなら、なぜSpaceXは再利用ロケットを着陸させようとしているのだろう? これには2つ理由が考えられる。

まず、これは明らかに火星への着陸技術だということだ。これがSpaceXの目標の1つだとすると、(私はそもそもSpaceXという企業を興した主たる目的が火星行きだと思っている)、着陸システムの開発コストは再利用性とは関係のない他のさまざまな費用として計上されることになる。

次に、再利用性はフライト料金の大幅な増大を可能にする。おそらく主目的はこちらだろう。SpaceXの財務モデルを解析してみると、良好で強いプラスのキャッシュフローに達するためには、このクラスのロケットがこれまで実証してきた年間10~12回よりも多くの打ち上げが必要になることがわかる。単なる生産と物流の観点からすれば、再利用性によって打ち上げ可能回数を簡単に倍増させる。

再利用性を実現することで、年間20~25回打ち上げを実行でき、スペースXはより確実なキャッシュフローポジションに入ることができる。これが非常に重要な再利用ロケット開発の推進力であると私は考えている。主として生産、輸送、および付随するインフラストラクチャの面からすると、第1段は打ち上げ回数を増加させる際にはボトルネックの1つになると考えられている。 再利用性によって素晴らしいブランドイメージを形成できるということもある。だがもっと重要なのは、再利用技術で火星着陸の準備をしつつも、スペースXが打ち上げ回数を倍にしてより多くの金を稼ぐことができる、ということだ。

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第1段は生産のボトルネックだから2~3回再利用できればそろばんが合うというわけですね。となると、再利用した機体で打ち上げ失敗があると一気にキャッシュフロー健全化が遠のきそうな気はします。オペレーション、どうなっているんだろうと思いますね。

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Atlas V エンジンを入れ替えて運用延長の動き

地球観測衛星WorldView-3を打ち上げたときのAtlas V Image Credit:United Launch Alliance

地球観測衛星WorldView-3を打ち上げたときのAtlas V
Image Credit:United Launch Alliance

5月13日掲載、日経ビジネスオンライン掲載『“アマゾン”ベゾスのロケットエンジン、表舞台にスペースXシフトを鮮明にしたULAの「ヴァルカン」』を読みました。何で日本にはってこうした大事な記事を掲載するメディア(できればアクセスしやすいオンライン媒体)は松浦晋也さんの記事くらいしかないのでしょう。新型基幹ロケットの将来にも関わるというのに。

それはともかく、ULA(United Launch Alliance)の Valcan登場とAtlas V、Delta IVの引退に関して昨日から新情報が話題となっています。

Aerojet Rocketdyneが開発する、AR-1エンジンを現行Atlas Vの代替エンジンとして採用する方向で検討が行われているとのこと。2019年以降、ロシア製RD-180はEELVの防衛衛星打ち上げには使用できない、との禁止令がすでに米議会で決定しており、予定では2019年にAtlas V→第1段階Valcanへの移行が行われるのかと思われていました。これに待ったをかけたのが、NASAのマーシャル宇宙飛行センターの元所長で、現在は防衛企業DyneticsのCEO、David A. King氏やNASAの前長官、マイケル・グリフィン氏が関わる航空宇宙防衛企業、Schafer社、そしてAerojet Rocketdyneらの防衛産業連合です。

4月29日、アシュトン・カーター国防長官は、これら企業連合に対してAtlas Vの運用と知的財産を移転させることができるか? との問い合わせをしたといいます。国防省側には、まだ実績がないどころか開発前のValcanロケットがどこまで当てになるのか強い懸念があるとのこと。Aviation Weekの記事では、「ケロシン燃料のRD-180からメタン燃料のBE-4に移行すれば、タンクがはるかに大型になる、なぜそんなことをするのか」とKing氏がULAのトーリー・ブルーノCEOに疑問を呈したというのです。

一昨年くらいからずーっとEELV参入の門戸開放を訴え続けているSpace XのFalcon 9に任せるという手もあります。もちろんその方向では進むのでしょうし、Falcon 9は着々と実績を積み上げています。ただ、53機連続打ち上げ成功というAtlas Vの実績には到底とどかない。また、Falcon 9はスケジュールの遅れが目立つので、打ち上げウインドウが厳密なタイプの衛星打ち上げには向かないのではないか、という懸念もあるそうです。「スペースXはだいたい3カ月遅れる」と私も聞いたことがあります。また、昨年のシグナス/アンタレス、先月のプログレスとISS輸送船の事故が相次いでおり、ISSへのカーゴシップはSpace Xの肩にかかっています。宇宙飛行士の安全が関わることですからこれは最優先にしてもらわなければ困るということで、Space X1社にEELV打ち上げまで託すというのは難しいのではと。今月話題になったクルードラゴンのPad Abort Testですが、あれも実は3月実施予定から遅れたとのことです。

Aerojetら企業連合側は、Atlas VのエンジンをAR-1に変更する案について、まずは技術的には2019年までに可能と考えています。米空軍の認証手続き(試験機の打ち上げ成功実績)を経て2020年にはAR-1搭載型Atlas Vを実用化できるということです。

問題は、ULAがAtlas Vの製造・運用の権利移転を認めるかという点と、あとは資金の問題。Spacenews.comやAviation Weekの記事では、問い合わせに対してULA側は「Atlas Vに関する権利を移転させる予定は全くない」と完全に否定しています。わざわざコンペティターを増やす理由など何もない、ということですね。ただ、防衛側は選択肢が増えてリスク回避できるのでむしろコンペティターに増えて欲しい。それが非の打ち所がない実績のAtlas Vなら言うことなし、でしょう。資金についてはどこから引き出すのか難しいところですが、前述の防衛企業連合は、従来通り政府系資金を得てきた経験が豊富だというのが記事の見方です。設立からこれまで総額120億ドルもの民間投資を獲得してきたSpace X(イーロン・マスクCEO本人による1億ドルの資金も含まれます)は別格ですが、防衛関連企業はその性質からいって、民間資金獲得はあまりうまくないそうです。

これから、Aerojet側企業とULA、防衛省の綱引きが始まるのでしょう。流れとして、この件についてAerojet側にAtlas V製造とAR-1エンジンへのリプレースなど開発費をつけること認めるかどうか、議会の小委員会で公聴会が開かれて、GAO(会計監査院)が出席し「どのオプションが国民の税金にとって最も効率よく使える道筋となるか」についての見解を示すことになるのではないでしょうか。米議会の分野別小委員会でもWebcastでみっちり中継が行われますから、これは見るしかないでしょう。あの早口英語を聞くのは骨が折れますが…知りたければ、やるしかないですね。

Aerojet Rocketdyne AR-1エンジン
http://www.rocket.com/ar1-booster-engine

Aviation Week記事
http://aviationweek.com/space/industry-team-hopes-resurrect-atlas-v-post-rd-180

Spacenes.com記事
http://spacenews.com/aerojet-led-team-seeks-atlas-5-production-rights/

ロイター記事
http://www.reuters.com/article/2015/05/11/us-usa-military-space-idUSKBN0NW28W20150511

Aerojet Rocketdyne AR-1エンジン Image Credit:Aerojet Rocketdyne

Aerojet Rocketdyne AR-1エンジン
Image Credit:Aerojet Rocketdyne

Aerojet Rocketdyne AR-1エンジン Image Credit:Aerojet Rocketdyne

Aerojet Rocketdyne AR-1エンジン
Image Credit:Aerojet Rocketdyne