世界の衛星開発と打ち上げ市場:ESPIレポート42から(その3)

欧州宇宙政策研究所(European Space Policy Institute:ESPI)が発表する、世界の宇宙活動に関する年次レポート「Space Policies, Issues and Trends in 2011/2012」から関心のある章の抄訳を行っています。

今回は第2章商業宇宙マーケットから、衛星開発(製造)と打ち上げサービスに関して。

※自分用のメモなので正確さは保証しません。詳しくはレポート本体をあたってください。

 

2.3.2 衛星製造

2011年の衛星製造に関する収益は不確実ではあるが、2010年、2009年のレベルと比べて大きな変化はないと考えられる。2010年、官需および民需衛星の開発による利益は145億ドルに達すると考えられていたが、実際には108億ドルとなり2009年の135億ドルから20%の減少(7%増加ではなく)となった。図2.6には、2006年から2009年までの期間、衛星開発収益は増加しているものの、減少の年も見られることを示した。図2.6では注意すべきトレンドが見られるものの、実際にこのペースの収益増が続けば、2013年には150億ドルに到達すると予測される。

Figure 2.6: 世界の衛星製造収益

 

2.3.3 打ち上げセクター

2011年の商業打ち上げ数は、41機のペイロードの軌道投入を行う目的でトータル18回(内1回は打ち上げ失敗)となった。うち35機は商用サービス向けである。合衆国は商業打ち上げ分野の牽引役ではなく、ロシア企業がトータル10回(55.6%)の商業打ち上げを行って首位の座を守った。さらに欧州の打ち上げは4回で22.2%、中国は多国籍企業シーローンチの打ち上げとして、2回の商業打ち上げを行って11.1%を占めている。18回の打ち上げによる収益の総計は19億ドルと算出され、前年に比して21.7%、5億2600万ドルの減少となり2009年からも4億8300億ドル下回っている。2010年には3億700万ドルあった合衆国の商業打ち上げがなかったことで、2011年、合衆国は商業打ち上げによる収益がない。欧州の打ち上げ収益は最大で8億8000万ドルに達し(前年から33.3%減少)、続くロシアはおよそ7億700万ドル(前年から14.4%減少)となっている。多国籍企業の打ち上げはそれに続く位置づけにありおよそ2億ドル、中国は1億4000万ドル前後とみられる。商業打ち上げ市場の収益が21.7%減少したのは、商業打ち上げの純益が減少したことによるものだ(中国と多国籍打ち上げサービスを除く)。しかしながら、こうした数字がこのセクターの現状を表しているわけではない。通常、打ち上げ費用は実際の打ち上げの1~2年前に支払われるため、こうした数字は過去の活動を評価しているものなのだ。

商業、非商業打ち上げを問わず欧州の打ち上げ活動を総合的に見ると、アリアンスペースの利益は、2年間の損失でわずかな利益しか上がらなかった2010年に対して2011年は10%の増加と考えられる。2010年、アリアンスペースは8300万ユーロ(11.07億ドル)の損失を出し、8億9700万ユーロ(11.97億ドル)の収益となった。クールーにソユーズ2を導入したことにより、アリアンスペースは3年連続減益を免れて、わずかではあるが9億8500万ユーロ(12.75億ドル)の利益を得た。欧州の4回の打ち上げは、アリアンスペースのアリアン5 ECAによるもので、2011年2月にはアリアン5によるES-ATV第二回の打ち上げが2008年3月の初飛行に続いて行われた。ISSへの第2回ATV(ヨハネス・ケプラー)打ち上げに続いて、後3回の打ち上げが計画されている。ATV3号機(エドアルド・アマルディ)は2012年3月23日に打ち上げられ、2013年のアルバート・アインシュタイン、2014年のATV5号機まで予定されている。2011年、クールーにあるヨーロッパの射場がソユーズ打ち上げのために整備された。この年、アリアンスペースは”ソユーズST”の呼称で知られる2機のソユーズ2打ち上げを行った。射場設備を欧州とロシアのために整備するという決定を行ったヨーロッパとロシアの記念すべきコラボレーションは、射場において打ち上げシステムの競争力と柔軟性を拡張するものだ。それだけでなく、ソユーズSTは2011年10月、ガリレオ衛星初のペア打ち上げを行い、欧州とロシアの商業的コラボレーションの質を証明する一例となった。欧州のVegaロケットは、2012年2月13日に初打ち上げを行った。Vegaロケットは1500kgまでの衛星を高度700kmに投入する能力を持ち、打ち上げ価格は1回あたり3200万ユーロ(4200万ドル)で、ロシアの弾道ミサイル転用ロケットより価格競争力で勝り、市場で十分な需要を得られれば2200万ユーロ(2850万ドル)まで打ち上げ価格を下げることができる。

Figure 2.7: 2011年国別商業打ち上げ活動 ( FAAより)

Figure 2.8: 2011年国別商業打ち上げ収益 ( FAAより)

 

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世界の衛星サービス:ESPIレポート42から (その2)

欧州宇宙政策研究所(European Space Policy Institute:ESPI)が発表する、世界の宇宙活動に関する年次レポート「Space Policies, Issues and Trends in 2011/2012」から関心のある章の抄訳を行っています。

今回は、第二章「世界の商業宇宙市場」から、衛星サービスのセクション。

※自分用のメモなので正確さは保証しません。詳しくはレポート本体をあたってください。

2.3 商業宇宙市場概説

2011年、衛星サービス、衛星製造、打ち上げ産業、地上設備からなる市場の収入は、Satellite Industry Association’s (SIA) の計算では2010年の1681億ドルを越える。事実、Space Report2012では商業宇宙産業の2011年収入総計を2169.9億ドルと見積もっている。しかしながら、こうした見積もりを作るにあたって、これらのソースで同じ計算法を使っていないことを明らかにしていない、それは明らかにされるべきである。事実、利益の伸びは2009年から2010年にかけての11%に対して、2011年では低くなりそうだとSIAは報告しており、2010年から5%となりそうだとしている。2011年の収益が500億ドル以上増えることは間違いなさそうだという点では、Space ReportもSIAも同じだ。続くセクションでは、主にSIAの集計とFutronレポートも加え、商業宇宙活動におけるキーとなる計算とデータを、活動の分野別に示すこととする。

2.3.1 衛星サービス
2011年と2.12年、衛星サービス産業は、世界経済状況の逆境の中でも目覚ましい回復を続けた。この産業の上向きトレンドは世界的に固有のものとして裏付けられており、新興国市場(東南アジアや南米)の急速な経済回復から利益を得ていると考えられる。新興国経済と途上国の絶え間ない要求は、持続的な衛星性能の発達と企業の収益をもたらしている。2011年、世界的な
衛星通信能力は900 36 MHZの送受信量に届くまで上昇した。

この産業は、打ち上げられる衛星の大型化と信号、送受信能力の高度化や投資によって、技術発展拡大を続けている。この産業は、技術発展と新サービスを正しく組み合わせる鋭い能力示している一方、現在の運用を確実なものにしており、今後数年にわたって収益を増加させていくだろう。

衛星産業に現れる成長率がゆっくりではあるが、衛星サービスは衛星製造や打ち上げサービス、地上設備など他のセグメントに利益を分け与え続けており、2006年から2010年まで平均して60%でバランスしている。2010年、衛星サービス市場は主にダイレクトトゥホーム(DTH)サービスの伸びによって1013億ドルを越える。しかし、衛星サービスの伸び率は明らかに鈍化しており、2009年の11%成長に対し、2010年は9%とである。

衛星サービスは、今後衛星テレビ(DTH/DBS)、衛星ラジオ(DARS)コンシューマー衛星ブロードバンド接続といったコンシューマーサービスと、トランスポンダ アグリーメントやマネージドサービスといった固定衛星業務、音声・データモバイルサービス、リモートセンシングといったいくつかの分野に分けることができる。続く節では、この分野での主な発展とトレンドをサービスの状況に従って個別に見ていくこととする。

■コンシューマーサービス
上で示したように、コンシューマーサービスには衛星テレビ、ラジオ、ブロードバンドサービスなどが挙げられる。ダイレクトブロードキャストサービス(DBS)は、ダイレクトトゥホーム衛星テレビと関わっている。この分野の産業が2010年、2011年に発展したと考えられるのは、新興市場の発展と、技術、サービスの質的な向上が見られたことによる。2010年の比較的フラットな収益と比較して、その後の伸びは明らかだ。2010年のDBS市場は718億ドルから791億ドルに増え、10.2%の伸びとなった。HDTVチャンネルが伸び続けている(2009年から2010年では42%)ことからも、2011年にかけてもこの伸びは続くものと予想される。2010年、コンシューマー衛星テレビサービスは衛星サービス収益の80%を占め、その70%がアメリカでのHDTVチャンネルとなっていて、残りがヨーロッパとアジアでのサービスである。その前の投影によると、DBS市場の年次成長率は、DBSが他の衛星サービス分野とその地位を入れ替えたのと同様、ビデオ配信のような従来のサービスにとって代わるものと考えられる。2011年、合衆国では3500万件の衛星ペイTV加入があった。2010年の衛星ラジオ収益は28億ドルに伸び、前年の25億ドルを上回って12%の伸びとなっている。ブロードバンド衛星サービスの利益の多く(70%)は合衆国から発生している。主な衛星オペレーターはとくに途上国に向けて新技術とサービスを増加させている。

■固定衛星業務
固定衛星業務(FSS)は、固定された地上ターミナルから衛星を使って放送を行う業務を差し、ブロードバンドインターネット、通信、ネットワークテレビ、ラジオ放送を含む。2010年、2011年、FSS市場の展望は相変わらず高騰しており、TVとブロードバンドサービスへの持続的な要求から、事業者は新しい技術への先行投資から利益を上げている。

一方、いくつかのレポートは2012~2013年にかけて新規衛星における投資は減少すると予想しており、現在のFSS市場におけるブームの影響はこの10年にわたって続くと考えられる。2010年、産業全体のFSS収入は4.2%上昇して150億ドルであり、増加してはいるものの、2009年の総額144億ドル、10.8%成長よりは明らかに減少している。こうした増加は、映像とブロードバンドに対する、特にアメリカにおける貪欲な要求によるものだ。Eutelsatの利益はその代表といえるもので、2011年利益の上昇傾向は11.68億ユーロ(15.58億ドル)にのぼり、EBITDAは9億2640万ユーロ(12.36億ドル)となっている。両者は前年から11.2%、11.9%の増加を示しており、それぞれ10.5億ユーロ、8278万ユーロとなっている。

需要増を取り扱うことで、事業者はもっとも適した方法で消費者のニーズをくみ取ることができ、技術発展に投資してきた。この目的で、2010年、2011年、ブロードバンドに接続するいくつかのKa帯衛星プロジェクトが発表された。しかし、トランスポンダ契約の利益では、2009年から2010年の間にのみ拡大し、2010年は部分的にU.S.ドル上昇のため覆い隠されている。

Eutelsatは、2011年3月31日からKa-Sat衛星のブロードバンド接続サービスを開始した。これはアストリウムが開発した高スループット衛星フリートによる初のサービスで、およそ44,000のサーフビーム、2ターミナルがオランダのブロードバンド需要の高まりを見越して用意されている。Ka-Sat衛星は、各900MB/sの転送速度をもつスポットビーム82本の帯域を提供している。このビームは、ヨーロッパ全体にわたってカバーしており、一部はアフリカにも送信可能だ。とはいえ、衛星は帯域幅を最大化しロケーションの柔軟性を処理するだけの処理能力は持っていない。カバーできるユーザー人口は約8億人に達し、対抗するアメリカViaSatのWildBlueサービス圏の3倍近い。ヨーロッパでのKa-Satの需要は農村部より都市郊外の方が高いと考えられ、政府によるブロードバンド促進事業の検討対象としてしばしば取り上げられている。

■リモートセンシング
リモートセンシングとは、事業者による光学またはレーダー衛星画像の販売を差す。しかし、過去数年間、政府がこうした画像取得のアウトソーシングを進めてきたことが市場を支えてきた。2009年、リモートセンシング収益は37%の増加となり、10億ドルに達したと考えられる。しかしながら、2010年のリモートセンシング市場の伸びは微増にとどまり、10億ドル程度にとどまっている。政府需要(特に防衛需要)はリモートセンシングサービス事業者の利益を増大させる主要なファクターであったが、2009年の利益増には民間セクターのクライアントの増加も関係している。

2011年、民間リモートセンシング衛星は14機打ち上げられ、打ち上げ数9機であった前年比55.6%の増加となった(政府調達衛星、大学衛星、研究開発衛星は含まないものとする)。さらにいえば、2011年には8機の軍事偵察衛星が打ち上げられ、前年の7機と比較して28.6%増となっている。昨年の民間と軍事、リモートセンシング衛星の増加は民間産業が軍事に比べて2倍の伸び率を示しており、政府の直接投資からパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPPs)に向かっていることを示唆している。

■モバイル衛星サービス
モバイル衛星サービスは、データサービスと音声サービス(衛星電話を含む)の双方を指し、2010年のモバイル衛星サービスは、前年の22億ドルに対して23億ドル、4.5%増の利益を上げた。この分野ではモバイル音声サービスは9%減少となっているが、モバイルデータサービスは10%の伸びを見せている。データサービスはモバイル衛星サービス利益の3/4程度を占めている。

合衆国では、2010年から2011年ライトスクエアード社のGPS信号干渉について厳しい視線が注がれた。ライトスクエアードは、アメリカ全土で最初のハイブリッドワイヤレス通信のホールセール事業を行う予定であった。2011年6月、National Public Safety Telecommunications Council(NPSTC)のテクニカルワーキンググループは、6カ月にわたる調査の結果、このインターフェイスが安全上の問題を引き起こす可能性を確認した。このことは、ライトスクエアードに40,000のベーステーション配備の認可を与えた米国連邦通信委員会(FCC)にとって看過できるものではなかった。ライトスクエアードはL帯で二つの10MHzブロック使用ライセンスを取得しているが、GPS信号もまたLバンド帯を使用している。地上ベースの通信はより強力で、宇宙からの微弱な信号であるGPS信号を凌駕してしまう。こうしたインターフェイス障害の結果として、地上ステーション間隔が400~800mの密度の地域では航空関係のGPS信号受信ができなくなり、高度3040m以下では航空機がGPSを頼ることができなくなる。また、警察車両も15キロワットの信号送信を行うライトスクエアード基地局から182m以内ではGPS信号を補足できなくなる。さまざまな緩和策を考慮して、ライトスクエアードには別の周波数帯を割り当てることとなった。ライトスクエアードは70億ドルのプロジェクトに対して5億8600万ドルの追加融資を受けることとなった。