日本時間5月7日、欧州Vegaロケット2号機 VV02で、ESAのProba-V、ベトナム初の地球観測衛星VNREDSat-1と相乗りで打ち上げられた、エストニア初のキューブサット”ESTCube-1″。エストニアはこれで軌道上に人工物体を投入した41番目の国となるそうです。これがまた面白いミッション。衛星から導電性テザーを展開し、太陽風を受けて深宇宙を航行する技術の実証だというではないですか。国家初の衛星ミッションがそれとは、IKAROSと野心でタメ張るのでは。
あんまり素敵なので、ミッションサイトから主要なところをつまんでご紹介いたします。

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ESTCUBE
※エストニア語、英語併記。詳細はサイトにてご確認を

【ESTCube-1紹介 】
ESTCube-1は、エストニア初のキューブサット、10cm角の1Uで重量1.05kg。

タルトゥ大学、エストニア航空アカデミー、タリン工科大学共同で2008年からのプロジェクト。フィンランド気象研究所とドイツ宇宙機関(DLR)の支援を受けている。
プロジェクトマネージャはタルトゥ大学のシルバー・ライトさん

主ミッションは新奇宇宙航行技術 “electric solar wind sail”、電気太陽風セイルの実証。”太陽からの帯電粒子や太陽風を受けて航行”するもので、考案者はフィンランドで、ESTCUBE-1が軌道実証を担当する。

【電気太陽風セイルとは】
基本的には、衛星の持つ電場と太陽から届く高速粒子との静電相互作用によるもの。衛星はまず広範囲に電場を生成する帯電ワイヤーを展開し、これが”帆”となる。この帆が帯電粒子を受けることにより、衛星が航行する力となる。1000kgの衛星が航行するには、重量100kgの電気セイルモジュール(1本あたり20kmのテザー×100本)を要する。モジュール全体が生み出す推進力は1N。小さいようだが、衛星の太陽電池パネルから生み出される電力で衛星寿命いっぱい航行できる。1年で秒速30kmまで加速できる。

本技術は太陽系航行のコストを低減しスピードを上げるもの。小惑星資源採取や水星着陸ミッションでのデータ採取に応用可能になる。

【ミッション目標】

  1. 電気太陽風セイルとなる10mテザーの展開
  2. セイルに働く力の測定
  3. テザー画像の撮影
  4. エクストラミッション:地球撮像。可能ならエストニアを。

【ミッションフェーズ】

  1. ロケットからの軌道投入
  2. 5分後に衛星プライマリシステムの起動。ハードウェアの整合性チェック。
  3. 30分後に通信アンテナ展開、地上局との通信開始
  4. 40分後に衛星から地上局へビーコン送信(衛星打ち上げ成功の確認を兼ねる)
  5. 2日間かけて衛星の健康状態チェック
  6. 衛星サブシステムの起動。地上局からのコマンド受信待機状態に。
  7. 地上局からのコマンド送信。ソフトウェアのアップデートなど。
  8. 衛星の回転が安定、最初の地球撮像
  9. 主ミッション開始。衛星に収納されたコイルを利用して回転、テザー展開を開始。
  10. テザー展開終了。テザーの帯電と計測開始。E-sailの効果を確認し、全段階のテレメトリを送信

【衛星詳細】
“ADCS”(高度決定モジュール)、”CAM”(カメラモジュール)、”CDHS”(オンボードコンピュータ)などを搭載。メインは電気太陽風セイル”PL”。導電性テザー(先端にエンドマス)は電子銃によって500Vに帯電する。

【衛星ビーコンを受信できる地上局の詳細】
http://www.estcube.eu/en/radio-details

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打ち上げから二日。現在は衛星の健康状態をチェック中でしょうか。宇宙開発国のひとつとなったエストニアにお祝いを申し上げるとともに、ミッションの成功をお祈りしたいと思います。

キューブサット級で導電性テザーの展開がうまくいけば、宇宙エレベータ的にも気になるところですね。